Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

こうもり

来る8月、KPBにてJ.シュトラウス”こうもり”が最近決まりました。最近はルサルカを筆頭にチェコ語作品が続いており、もちろんそれはそれでいいのですが、そろそろチェコ語以外の作品もやりたいと思っていたところでした(笑)確かに近年はルサルカは自分の最大のネタになっていて、チェコオペラをまともにやる唯一の日本人指揮者ということで光栄なことではありましたが、元々はオーストリアに留学しドイツ語圏が長いので、こうもりのような作品は実は一番経験も知識も豊富な主要レパートリーであります。自分は指揮者としてはやはりオーストリア出身なので!


というわけで、久しぶりにドイツ語です!ドイツ語は話してはいますが、作品としてまともにやるのはしばらくあいておりました。オーストリアに育てられた自分としては大いに血が騒ぐ作品です(笑)ルサルカの時はチェコ語、これは言うまでもなく今の日本人には知識も経験もなく、何より正確な情報が全くないので明らかに不可能なレベルの中どうするかでしたが、今回のドイツ語はそうではなく、ある程度の知識経験はあります。しかし、正確なドイツ語、特にウィーンやオーストリアとなると、実はこれはこれで正確な情報があるとは言えない。それどころかドイツ語は日本では結構誤解や勘違いが多い。さらに、日本ではオペレッタはほぼ日本語上演。オペレッタをドイツ語で、実はまだまだ未開の地的なレベルとも言えます。


とは言え、誰も知らないチェコ語を一からやる、それなりに知ってるが誤解の多いドイツ語を改めてやり直す、これ、どちらも同じぐらい難関です。逆に言えば、この両極端な難関両方に挑めると言うことは、かなりきつい話ではあるものの、指揮者としてはある意味貴重な経験とも言えます。そんな流れの中、色々考え色々試してみたいと思います。


根本的違い

ヨーロッパと日本の大きな違いは沢山あるが、その筆頭に上がるのが”人付き合い”である。人とのかかわり方や接し方、すなわち付き合い方が全然違う。日本は常に上下関係縦社会。どんなことがあろうと年上が絶対的、仮に間違っていても従わねばならない。そしてこれは人間関係以外にもそのままで、全ての物事に上下の優劣をつける。言わばこれが日本の型の根本で、全てのことはこの中にあり成り立っている。反面ヨーロッパは上下関係がない。年齢や立場によって上下という発想自体がない。人は常に台頭であり、例えば日本で上下とされる立場や役職も、ヨーロッパでは単に役割分担に過ぎず、人と人は常に対等である。当然全ての物事にもそのままである。


そしてこれらはもちろん音楽にも当てはまる。言うまでもなく劇場やオーケストラなどの集合体は全てこれがそのままである。音楽の解釈や価値観も全てそうである。この違いはその上下という発想があるかないかというのが根本で、その違いが始まりで結果はものすごく違うものになる。ヨーロッパと日本では言うまでもなく別世界です。


日本人のようなヨーロッパから遠い世界の者が西洋音楽を学ぶ時、本来ならばまずこの根本的違いを知った上で学び始めるべきである。もちろんその違いを頭で理解するだけでなく感覚的にも理解できないと西洋音楽を理解するのは難しいわけである。しかしほとんどの場合この根本の違いが音楽にも比例すると気づかずにやり始め、日本人は日本人の感覚のままで日本人の都合により理解し、解釈し、そして実践してしまっている。日本国内だけでほどほどにやるだけならばそれで充分かもしれないが、しかし純粋に本物を理解する、あるいは本場でやりたいというのであれば、日本人としてやってしまった者はそれらを全部リセットして根本に立ち返ってやり直すしか道はない。それは年が行くにつれてどんどん難しくなるものである。となると、早い時期にこの根本的違いに気づけるかどうかが大切と言うわけである。島国日本に住む我々にとって一番難しいことかもしれないが、しかし外のものをやるという意味では一番大事なことと言えよう。


どこで何をするか、これは人それぞれであるし好みや適性なども関わって来る。とりあえず言えることは、もし西洋音楽を本場ヨーロッパでやるのであれば。まず人としては現地人と対等になれるかどうか。人種的限界はあるにせよ、最低限度仲間として認めてもらいその輪に入れなければ話にならないわけで、ましてや自分は日本人だから日本人として…といつまでも言っていては不可能である。もちろん日本人であることを捨てろというわけではないが、現地でやりたいのなら現地の人と知り同じやり方ができないと意味がない。そして音楽的には、確実に現地人異常なものがなくてはいけない。やはり世界中どこに行っても地元人を優遇するのは必然である。我々日本人がヨーロッパでやるというのは、要するにプロ野球の助っ人外人と同じである。長打力が欲しいからわざわざアメリカから呼ぶわけで、同じ力なら日本人の優秀なプレイヤーを取ればいいわけである。したがって、その辺のヨーロッパの演奏家と同じ程度では意味がない、現地人以上、もしくは特別に興味を引く何か特殊な能力がある者でないと、遠いアジアから来た我々がヨーロッパでまともな職を得るのは難しい。これらは基本的なことであるが、現地人以上の実力があったところでそれがそのまま成功につながる保証はどこにもない。最後はタイミングや縁の話であって、これは実力とは関係ない話である。それら運的なことも踏まえて実力という言い方もあるが、しかしこれは磨いて得られるものと言うわけではない。人種差別等理不尽なことは世界中に多く存在する。実力と同様に、それらと戦い耐える忍耐力も重要になってくる。


宣伝2つ

先日ルサルカ公演を行ったKPB、今夏に創立5周年記念公演として第8回定期公演を行います。内容は、J.シュトラウスⅡ世”こうもり”、演奏会形式にて原語上演&ナレーション付きで行います。只今合唱メンバーを募集中です。詳細は以下の通り、ご興味持って頂いたからは是非お気軽にご参加下さい♪



それから同じくKPB企画ですが、来る4月30日(月祝)に都内にてチェコフィルメンバーによる弦楽四重奏団”Apllon Quartet”と共に弾く&交流する弦楽オーケストラセミナーを行います。こちらは弦楽器奏者のみの募集となりますが、世界一流オケの一流奏者と一緒に本場のドヴォジャークを弾くというまたとない貴重な機会です。ご興味持って頂いた方はお気軽にお問合せ下さい。