Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

コレペティの留学~留学生活編

コレペティ科に入学!とりあえずはめでたくて、当然本場で本格的に学べるわけなので、ず尚に喜んでいいところである。入試までもすでに日本では経験できない過酷な時間を過ごしてきたことであろう、まずは少し優越感に浸るのもいいであろう。しかし、大変なのはここからである。コレペティないし指揮の修行とは想像絶する過酷なもので、いよいよ本場での本当の生活が始まるのである。


まず日本の音大と比べて課題数も授業数も全てが半端ない。日本の音大を出てきた人ならば消せる単位があるので、ある程度消せば多少楽にはなるが、仮にまともに全部やった場合、日本では絶対経験できることのないすさまじいキャンパスライフとなる。参考までに、自分がグラーツ芸大のコレペティ科&オケ指揮科在学時のとあるゼメスターを参考までに書く。


月/対位法、指揮レッスン、アナリーゼ
火/ソルフェージュ、和声、コレペティレッスン
水/スコアリーディング、ピアノ、イタリア語、音楽史、合唱
木/古楽基礎演習、副科ヴァイオリン、音楽史(近現代)、副科声楽
金/劇場経営学、チェンバロ、フランス語
土/休み
日/休み


記憶が曖昧な部分も多少あるが、一番科目数が多い時はこんな感じな時があった。生活的には、まず朝7:30に学校が開くので朝1に行って練習室を予約。まず朝授業開始まで1~3時間程度練習する。それから夕方ぐらいまで上記の授業へ。夕方ぐらいに終わると、夜21時過ぎまで練習可なのでそれまで練習。授業の合間に運よく練習室が確保できた時も練習、あるいは休憩を挟みながら図書館等でスコアリーディングなど。週末は、土曜日こそ朝ゆっくり寝て昼からゆっくり練習に行くが、日曜日は10:00~16:00で練習可な為9:00過ぎに学校へ行き練習室取りの行列に並ぶ。16:00まで練習して帰宅。演奏会や特別講義などが入るともちろんそっちへ行くが、基本的にはこのような生活を1年中送っていた。課題的には、指揮、コレペティ、ピアノ、スコアリーディングは常にそれなりにある。例えば指揮の課題と言えば、1曲=シンフォニー全楽章、コレペティの課題と言えば常に3本のオペラを、この時点で日本の音大生の課題量を数倍超える。さらに、講義系でも宿題が課せられたり、そうでなくても自分で勉強しないと対応不能なものもあるので、要するに永遠休みなく大量の課題と時間に追われる過酷な生活と言うわけである。余談だが、さらにすごいのは、ヨーロッパの学生らはこのように徹底的に勉強しながら、その微妙な合間に徹底的に遊ぶのである。常に何をするにも徹底的に全力で、この辺の感覚と体力はすごい。日本人には相当大変ではあるが、しかしこんな環境の中過ごしていくと対応できた人は本当に順応していく。日本ではありえないことかもしれないが、ヨーロッパでその後仕事しようと思うならば、確かにこういった生活経験は必要である。


さて、コレペティに関して具体的に。レッスンは個人レッスンで、永遠オペラのヴォーカルスコアを弾き語りし続ける。やはりこれが何よりの基礎で最重要である。弾き語りすることによって、ヴォーカルスコアをピアノで弾くことのみならず、歌詞、ブレス、間合い、フレージング、和声等、一通り全てのことを理解できる。歌わなくても伴奏できると思う方もいるかもしれないが、それは単にメトロノーム的に合わせて弾いた機械的かつ表面的なレベルの話であり、本場で通用すべくある程度のレベルに行くのであれば弾き語りで得られるものは超最低限度である。そしてレッスンでは、自分なりに準備して行った弾き語りを行い、教授が音楽的なこと、声楽的なこと、ディクション、楽曲分性や解釈等、色々なことを教えてくれるというものである。弾き語りの練習は大変で、特にコレペティ科ともなると常に3本ぐらいのオペラをやり続けるわけなので、はっきりいって準備は相当大変である。最初の方は全く時間が間に合わずどうするのって感じになるが、ある程度時間が経過するとそんな中でも何とかなるようになってくる。この訓練と経験もものすごく大事である。そんな過酷な毎日を過ごし準備した課題をレッスンへ持って行き、そこに教授が色々教えてくれる、必死に頑張って準備すると本当におもしろいレッスンが待っているわけである。それだけにやりがいがあるが、そう簡単にはいかない。自分がいたオーストリアは比較的祝日が多いの意外と学校休みの日が多いが、それゆえに日本を出たことない人で日本の音大しかしらない人は軽く見る人が多い。しかしオーストリアの音大に入って1ヶ月が過ぎると、そういう人たちがものすごく低レベルに思えて来る。それだけ現実は厳しいと言うことである!


もう一つ。上記の科目を見て欲しい。グラーツ指揮科を例に上げると、例えばピアノとイタリア語は必須である。しかし自分はコレペティ科にも入っていたので、コレペティ科必須科目としてチェンバロとフランス語が入って来ている。これはオケ指揮と合唱指揮にはない。この辺がコレペティ科独特である。また指揮科は全員当然コレペティは必須で週1だが、自分は週2である。上記はコレペティは火曜日に1回しか書いてないが、これは1時間(45分)を1回にまとめるべく続けて行い2時間(90分)としていたわけである。自分の教授はウィーン在住で毎週火~水とグラーツに来られていたので2日に分けることも可能だったが、面倒くさいのでまとめたわけである。


自分の例を参考に、コレペティ科の留学生活が大体お分かり頂けたかと思う。オペラはよほど規模の小さい室内オペラ等でない限り長くて膨大である。それを常に3本学び、在学の打ちには少なくとも数本以上のオペラをレパートリーにするわけである。これはやった人にしか分からない過酷さではあるが、例えば声楽家がそれなりの規模のオペラの主役級を1回やると考える。それだけでもどれだけ大変かは経験者なら分かるだろうが、声楽家で最低限度のオペラ経験がある方ならその大変さはほぼ予想着くであろう。これでもオペラ1本ということになるが、コレペティトアのオペラ1本とはそのオペラを隅々まで知ることである。いくら主役級とは言え、その1本とはまるで意味が違う。この先は本当にやった人にしか分からない領域かもしれないが、それが大体どんな領域なのかはオペラ歌手の方なら何となく理解できるかもしれない。コレペティトアと指揮者はそういった訓練を何年も行っているわけである。


いかにも大変そうにばかり書いてしまったが、少し書いたように準備は大変でもレッスンはものすごく楽しいものである。日本では絶対に学べないことだらけで、それを本場のプロのコレペティトアやオペラ指揮者から直接学べる本当に貴重で尊い時間である。本当に本気でこの道を究めたいと言うのであれば、それだけ苦しんで苦労する価値は充分にある。日本人目線ではどうしても大変そうな部分ばかりが目に付くが、希望を持っている方は決して気を落とさず、是非楽しみでやって頂きたいと思う。自分も例外ではなく、元々オペラを振る為に留学して、それでは物足りず2年目からコレペティ科にも在籍したわけであって、1年普通にコレペティレッスンを受けた後にさらに自ら倍の苦労を買って出たわけであろう。本当にオペラを愛し本場で勝負したい人にとっては、逆に喉から手が出るほど欲しいチャンスである!


このような過酷でありながらも中身の濃い時間を数年過ごし、ようやくプロのコレペティトアやオペラ指揮者になっていくわけである。次回は、コレペティトアとしての実践、すなわち仕事としてどうするのか、できるのか、就職、劇場等について書く。