Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

オペラ人として

いつもコレペティに関することやオペラ界に対する意見等をメインに書いているが、たまには自分についても書いて見ることにする。


自分はオペラ指揮者&コレペティトアである。職業は?と聞かれると、迷わず”オペラ指揮者”と答える。あるいはもう少し説明できるならば、コレペティトアとも言うし、伴奏者と付け加えることもある。以前は”指揮者”と答えていたが、今ははっきりと”オペラ指揮者”と答える。


自分は確かに”指揮者”であることには変わりないが、本来指揮者とは総称である。厳密には指揮者という職業の中には色々な分野があり、オペラ指揮者以外にも、シンフォニー指揮者、合唱指揮者、吹奏楽指揮者など、あるいは学生やアマチュア等を指導する者も指揮者と言う。日本では指揮者=シンフォニー指揮者、すなわちコンクール上がりのシンフォニー指揮者が普通と一般的に思われているが、実は掘り起こすとかなりの職種が存在する。で、自分はその中で根っからのオペラ指揮者である。


なぜそうはっきり言えるかと言うと、自分の中での優先順位はオペラが一番であるからである。当然指揮者なのでシンフォニーも振るし振れる。ただ何がメインかと言われるとオペラそのものが一番重要であり、はっきり言ってしまえばシンフォニーを振ることよりもオペラのコレペティをやるほうが自分の中では優先順位が高いわけである。極端な話、一生シンフォニーだけ振るのと、一生オペラのコレペティだけをやるのとでは、迷わず後者を選択する。指揮者でそれは変に思われるかもしれないが、自分は確かに指揮者ではあるが、それより何よりオペラ人である、色々あった結果最近自分で改めてそれに気づいた。


一つ辛い経験を書く。近年チェコに進出して色々お世話になっている。しかしチェコオペラ界は異常なまでに閉ざしていて、どういうわけか日本人の自分がチェコ国内でチェコ人に”オペラ”というと突然変な顔をされる。さらには、自分に協力的な方ですら「何だ、オペラ指揮者なのか…」や「え…、オペラ…」と言われてしまい、多くの場合その時点で連絡が来なくなったり応援終了になったりする。劇場関係者と話しても色々変なことがあり、例えば履歴書を見せると半信半疑な顔をし、レパートリー知るとを見せるとあからさまに「これは嘘だろ!」と言う酷いものまでいる。聞くところによると、外部者に慣れてない人種なため不安を感じそうなると言うのも一理あるらしいが、しかし「何で日本人なのにオペラを?」という声はよく聞くので、確実に差別はある。要するに、日本人にオペラが分かるのか、振れるのか、何を馬鹿なこと言ってるんだ、と。例えばドイツ語圏ではさすがにそれはない。もちろん日本人は下に見られてはいるだろうが、日本人だからと言う理由でそうは言われない。しかしチェコでは、そもそも日本人が普通に西洋音楽のオペラをやっているということすら知らない人たちが結構多く存在する。例えば、突然外人が日本に来て歌舞伎や能などの団体へ入れてくれと言いに来ているような感覚であろう。とにかく、相手にされないのが現状だ。


その経験があったからこそ、自分はオペラ指揮者であるという誇りを強く持ち直し、職業はオペラ指揮者ですとあえて言うようになった。名刺も履歴書も指揮者→オペラ指揮者に書き直した。そして指揮者である以前にオペラ人だと強く認識するようになった。今後どこで誰と出会い、どんな縁があってどういう活動できるかは分からないが、あくまでオペラ最優先で、オペラ人として、それゆえにオペラ指揮者&コレペティトアとして生きて行く。