Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

発音について

オペラでは言葉の発音、すなわちディクションが重要である。しかしこれは常に多くの問題があり、全ての歌手にとって永遠の課題とも言えるものである。同時に一生付き合わねばならないものでもある。


どこの国のどんな人種でも、その土地のその言葉のクセや訛りがあり、オペラの言語が母国語でない限り、完璧に発音するのは限界があるかもしれない。でもやり方次第で限りなく完璧に近くはなれる。でもこのそれぞれのクセや訛りはどうしようもない部分でもある。大事なのは客観的になることである。


この発音に対してどの程度のものを求めるかはその歌手の目指すレベルであり、同時にそこから意識レベルも分かる。限りになくその発音を追及する者から、完全にそういうのを無視して自分の都合な者まで。


日本の声楽家の傾向。まずは残念ながらかなり悪い方である。これはアルファベットを使わないアジア人はまずその時点で不利なのは仕方ない。ゆえに謙虚に客観的に勉強する必要がある。それとこれには耳が物凄く関わって来る。まずその発音する音が正確に聞き取れないと決して正確には発音できない。アジアン人全般に言えることだが、日本人のその耳はかなり悪い方であることは現実である。ゆえに不思議な現象が起きることもある。現地では現地人によく通じるいい発音のできる人でも、日本では発音が悪いとされることがよくある。こういう者は、明らかに正確に発音を学ぼうとし、それが現地人には通用するが、日本人の音と耳の感覚で考えてしまっている人には当然聞き取りにくくなる、というわけである。


とは言え、話す発音と歌う発音は別物である。正確な発音で話せるからと言って、正確な発音で歌えるわけではない。まず初めに、正確に発音できない人が歌えば正確ということはまずあり得ない。しかし、例えばドイツ人でもドイツ語で歌って何言ってるか分からない者、綺麗なイタリア語を話すイタリア人でも歌うとよく若わない者、こういうのはかなり多いわけである。コレペティトアがディクション指導する時は、単に正しい発音だけではなく、その辺を分かった上で歌手に接する必要がある。これは発音と発声が綿密に関係している。これを研究するのは難しいが、絶対に避けては通れない。声楽の専門的訓練をある程度した者ならいくらか理解は早いであろう。


いずれにせよ、母国語以外の発音に関しては謙虚に客観的に、そして母国語も踏まえて歌う場合は発音と発声の関連を常に気を付けること、これが声楽やそれに携わる者が発音を考える上での基礎である。