Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

全く証明にならないもの

近頃は指揮者&コレペティトアのレベルの低下が世界中で著しい。人数だけはやたら増えて来たが、本当に優秀な人材は減少の一途。特に指揮者のそれは目立つ。その大きな理由の一つにコンクールがある。新世紀に入り特にここ10年ぐらいで国際指揮者コンクールの数が急増した。それに連なって世界各地で指揮講習会も急増した。自分が留学中はここまで多くなく探すのに苦労したが、明らかに時代が変わった。とは言えそれらはあくまでビジネスであり、若手育成等は明らかに二の次であることは言うまでもない事実だが。


指揮者コンクールが増える、これは言いかえるならシンフォニーしか触れない指揮者が増えることであり、オペラ指揮者が減ると言うことである。これがどういうことかと言うと、元来指揮者とはオペラの現場で長年下積みして修行し成長して行き、オペラ指揮者としてキャリアを築いた後にシンフォニーも振るというのが伝統で、それにより数々の歴史的名指揮者を生み出している。言わばオペラ指揮とは指揮者の基礎であり、オペラを理解していることが一流指揮者の条件である。しかし今の時代、シンフォニーだけで勝負して、うまくいってコンクールに上位入賞できれば即デビュー、一攫千金である。となると、その一番大事で一番時間のかかるオペラ修行を見事に根こそぎ省きデビューする指揮者が急増したわけである。当然上記の指揮講習会もそのためのシステムになり、極めつけは世の中の音大の指揮科がシンフォニーのみ、コンクール対応型な教育になってしまった。その結果、勉強も仕事も、全てにおいて指揮者として最重要な基礎が欠けた世の中になってしまった。当然世界中の指揮者のレベルは落ち続けるわけである。そして若い世代のプレイヤー達は、そろそろそういう指揮者しか知らない者も少なくなくなって来て、指揮者とはそういうものとなってきている。このままでは近い将来、本来のいい指揮が消滅してしまい、悪い意味で新しい時代が来てしまう。


そんなこんなで、世の中ではコンクール入賞歴、地域によっては卒業&終了といった学歴を重視することが多いが、しかしそれらは全く持って実力の証明にはなっていない。コンクール入賞がそれなりの水準ということもなければ、指揮科卒業が最低限度の教育を受けたというこにもならない、これらは何の参考にもならないことはすでに明らかな現実である。その辺から変えて行かない限り、このまま世界の指揮者はどんどんドツボにはまって行くであろう。