Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

最近の指揮傾向

以前ここにも何度か書いたかもしれないが、特に今世紀に入ってからは指揮者は完全にコンクール社会になったと言っても過言ではない。中には地道に劇場で積み上げる者もいるが、その数はかなり減って来て光が当たらない=認められにくい存在になってしまっている。特に日本では、指揮者は何かしらコンクール上位入賞がないと不可能である。元々劇場がなく指揮者=シンフォニーオケな国なので仕方ないのかもしれないが、しかしこれだけ情報化社会においてそろそろコンクール指揮者の浅はかさに気づく人が出てきてもいいのではと思う。


コンクール指揮者=シンフォニー指揮者とあえて書くなら、その傾向はエンターテイメント志向が強いと言える。技術的に言うならば、まずは比較的短時間にコンパクトな仕事ができるという能力が求められ、ビジネス的にうならばコンクール主催者を筆頭としたマネジメント側にとって特になる存在(タイミング、人種、コネ等)、これがコンクールで勝てる最大の要因であろう。後者は時の運等の問題もあるかもしえないが、前者は極めて浅はかになりやすい。一見小ぎれいに振っていて格好いいかもしれないが、劇場叩き上げ指揮者のように長年の経験によって培われて来た深いものとは程遠いわけである。またさらに、そういう傾向が強くなった結果、オペラ指揮そのものにたいする評価も昔と変わって来ている。やはり表面的になってしまってきている為、オペラ指揮を地味とか単調に考える傾向が近年強い。確かにただでさえ下に潜っていてオケと歌手を合わせるという作業をしているわけなのである意味地味なのかもしれないが、しかしその作業内容、そしてその奥深さ、単にオケだけを小ぎれいに振るコンクール指揮者とはまるでレベルの違う話である。もちろん、単に合わせておしまいという浅はかなオペラ指揮者もいないわけではないのでそれは当然話は別だが。


何となく最近思うことだが、ここ10年ぐらいで世界中で指揮のコンクールやマスタークラスが多発して来た。ところが、マスタークラスこそ常にそれなりの数あるが、コンクールは今現在、一時に比べるとラッシュがちょっと収まったような気もしなくもない。今後新たなビジネスチャンスが出て来るのかもしれないが、しかし近年中止や延期が相次いだり、また今現在公募がかかっているものが一時的かもしれないがかなり少なくなっている瞬間でもある。単なる谷間かもしれないので、それなら近々戻ってくるかさらにエスカレートするかもしれない。しかしもし一旦終焉ならば、世界の指揮傾向は今後どうなって行くのか。傾向や流れからして昔のような叩き上げの時代に戻るとも思えないが、せめてコンクールの時代という勢いが衰退してくれればと密かに願う。