Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

採用基準

コレペティトアはもちろん、指揮者も、歌手も、オーケストラ団員も、劇場に入る者全てが通る道、それが採用試験である。やり方はそれぞれのジャンルの特徴があり、それぞれが大体決まったやり方で行われている。似たような課題で、劇場の意向や規模等によって、その決まった範囲の課題で何がどの程度出るか、といった感じである。


経験ある方ならお分かりかと思うが、この採用試験と言うのは色々な意味で本当に難しいものである。ある意味コンクールもそうかもしれないが、数打てば当たる的要素もある。自分の経験と審査する側から聞いた話をもとに、劇場採用試験の採用基準について書いてみる。


親しくさせて頂いている某ドイツの劇場のGMD(音楽総監督)が言われていることである。「採用試験は、決してうまいやつを探しているわけではない、その時欲しい人材、使える者、相性の合う者を探してる」と。これはうまい具合に世の中の劇場の採用基準を一言でまとめた言い方だと思う。次に例をいくつか上げてみる。


まず分かりやすいのが歌手である。例えば、重い声のドラマティックなソプラノを募集したとする。当然、それ相応の声でドラマティックに歌える者が集まって来るわけであるが、ここではたとえどんなにうまくても、声がよくても、劇場側が求めるそれでなければ対象外となってしまう。もちろん招待する時点である程度書類や音源による審査はしているであろうが、いずれにせよまず明らかなのは、その時その劇場が求めているものにどれだけはまるかはまらないか、まずはこれで審査されるわけである。さらに、最終的に数名がそれにはまったとしよう。甲乙つけがたい場合、最後はやはりその受験者のキャラクター等がその劇場に合うかどうかとなってくるであろう。うまくても、チームとして仕事できるかどうか、それがうまくできる可能性がない者は決して通らないわけである。その辺で最後の数人から一番適任と思われるものが採用されるであろう。


次にオーケストラ団員でる。弾き方、音、などから自分たちと一緒に弾く上で合いそうな者を選考して行き、やはり最後にはその中で誰が一番共同作業しやすいか、またはやりたいか、となるであろう。楽器による特徴もあるであろう。例えば弦楽器のTutti奏者であれば、まずはそのパート内でのチームプレイが大事になるであろう。が、管楽器の場合は基本常にソロである為、もちろんパート内やセクション内の都合もあるが、全体との絡み的要素がまともに最初から現れるであろう。


そして、コレペティトアと指揮者である。原理は同じである。まず劇場の音楽チームの意向や好み等があり、劇場の規模やコンセプトによりどういう演目をどの程度やるかがある。それらにより、おもしろいと思われる者が招待され、最後はやはりその中で一緒にチームとしてやりやすいものが選ばれるであろう。コレペティトアの場合はこんなところであろうが、指揮者ともなると音楽チームのみならず、劇場のオーケストラとの相性もかなり重要になる。指揮者のタイプや性格がそのオーケストラと合うかどうか、それぞれの求めてるものがどうなのか。ゆえに、劇場指揮者の採用試験では、オーケストラ団員からの票を取る場合が多い。そして最終的にIntendant(総裁)やGMDらによって決定されるわけである。


大体こんな感じであろう。そしてこれらは、ある程度知り合い、ツテ、コネなどで決まってしまうことも確かにある。その場合最重要かもしれないその相性的な部分で確かだからである。もちろん特にそういった者がいない場合、受験者の中から一番合う者を探すことになる。採用基準は大体の傾向は分かって頂けたかと思うが、実際にいつどこでどういう感じで審査が行われるか、それは行ってみないと、やってみないと分からないし、最後まで一体何だったのかということもある。受験する側としてできることは、基本的に常日頃腕を磨く、レベルをキープする、といったことぐらいしかないかもしれない。それで縁のある劇場を探し求めていくわけである。これも大事な出会い、結局はそれに尽きるかもしれない。