Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

違い

世界の2大ピアノと言われているのが、SteinwayとBoesendorferである。日本では圧倒的にSteinwayが人気がある。この2つの違いとは何か。ここに好みや感覚など色々な傾向が現れる。


まずこの2つのピアノの違いだが、Steinwayはしっかりとした固めの音、Boesendorferは柔らかく溶け合いやすい音、ゆえに、Seinwayはソロ向き、Boesendorferは伴奏&アンサンブル向きとされている。以前ピアノ会社の製造者や販売者らに具体的な話を聞く機会があったが、製作の時点で確かにこれらの違いがはっきりしている。これらは確かに事実である。


しかし、不思議なことがある。日本で大人気のSteinway、前述の性質から日本で好まれるのは確かによくわかる。柔らかいものよりもしっかりとした者が好きな人が多いであろう。しかし日本人の多くは、逆にBoesendorferは固いと言う人が多くてびっくりする。これも前述の通り、ある製作者らと話した時にあえて聞いてみたのだが、まず構造上はは明らかに意図的にBoesendorferは柔らかく作っている。ゆえに固いわけがない。それにしても多くの人がそう思い込んでいる。それはなぜか…。


正直、確かな理由は分からない。が、似たようなことが言葉にもある。多くの日本人はドイツ語を固いと言うが、これまた実際は違う。例えば某ドイツ人から聞いたことだが、ドイツ語を固いと思って意識して固くドイツ語を話す日本人のドイツ語を聞いて「固すぎてイタリア語みたい」と。ドイツ語よりも柔らかいと思っていたイタリア語みたいと言われて変な感じだろうが、実際はイタリア語の方が子音がはっきりきっちりしていて固いわけである。ドイツ語は子音は二重になったり母音が中間的なあやふやな音になったりとイタリア語のような固さはない。さらに言うならば、固い言葉にあのような美しいドイツリートの音楽は生まれないわけである。


話を戻して、Boesendorferはオーストリア、すなわちドイツ語圏の楽器であり、まさにドイツリートの国の音である。そこから考えても固いわけがない。しかしながら、ドイツ語が固い、ドイツ語圏のピアノが固い、これらから日本人にはドイツ語やドイツ語圏のものが固く聞こえたり感じられたりする性質をもっているのかもしれない。実際は明らかに違うわけだが、日本人独特の性質が何かあるような気がする。


とは言っても、固いと思ってやると力み過ぎて不自然になるものである、ドイツ語を話すとき、ドイツ語圏の楽器を演奏する時、決して固いと思ってやってはいけない。