Der Korrepetitor

オペラ指揮者&コレペティトア・宮嶋秀郎がコレペティについて語るブログ

テンポ設定

楽曲にはテンポ設定が存在する。基本的には楽譜の最初に文字で書かれ、ものによっては数字(メトロノーム)で記述されている。そして曲の中でもテンポが変わるたびに同じような形で指示される。演奏家はそれらを解釈し、演奏上ベストなテンポ設定を目指すのでる。


しかしこのテンポ設定とは、多くの場合その中にいくらかの範囲があり、本当のベストテンポというのはなかなか簡単には見つからない。例えばAndanteとあれば歩くような速さとされるが、歩く速さとは人によっても状況によってもかなりの種類があるわけで、一概にこれとは言えない。もちろんその音楽に合わせて考えるわけだが、この時点でその音楽にとってのベストテンポはというと、すでになかなか複雑である。探し当てるには、ひたすら研究、訓練、経験などであろう。


また場合によっては演奏上の理由でテンポ設定がなされることもある。例えば速い曲で細かい音符が多い場合、最低限度それが演奏可能なテンポがギリギリであり、そこから同じ感覚を得られる範囲でいくらかの幅がある。ゆっくりなテンポの場合、例えば4拍子で、指揮者が4つに振るのか8つに振るのか、その変ですでにそれなりの幅が生じる。


このようにテンポ設定とは、基本的に音楽的理由と演奏的理由で設定されることが多い。主に音楽だが、場合によっては演奏上のことも考慮される。しかしやってはいけないテンポ設定がある。楽譜の指示や音楽的感覚を無視して、自分勝手に変えてしまった結果全く違うものになってしまうこと。後は技術的問題等で、最低限度楽譜にあるテンポですら演奏が難しい場合に勝手に自分の都合に曲を合わせてしまうということ。この2つのテンポ設定はまともな演奏家のものではなく決してやってはいけなものである。しかし、実はこの2つのパターンは残念ながら世の中で多く起こっている。自分本位になっていくとある時からこの領域に無意識のうちに陥っている場合も多い。大事なのは、その曲=音楽と純粋に対話を続けることで、そうしている間はテンポ設定もその範囲から踏み外さないはずである。